乳幼児期の食事。
スプーンの持ち方から始まり、箸への移行。
子どもに教える必要がありますが。
その方法は誰も教えてくれません。
本記事では。
現役の発達相談員で、保育園巡回をしている僕が、
・スプーンはどうやって持たせるといいのかな。
・持ち方の練習は、いつ、どうやって?
・補助箸は使った方がいいのかな。
こんな疑問にお答えします。
【僕の簡単なプロフィール】
保育者として20年。その後、地域の発達相談員と幼稚園・保育園巡回の経験が15年ほどあり。
大学院では保育や教育の心理学(学校心理学)を専攻していました。
食事に関する相談も多く受けております。
所持資格:公認心理師(国家資格)、幼稚園教諭、小学校教諭など
スプーンを3指で持てることが、その後の箸や鉛筆のベースとなります
ですので、「もうスプーンは持てるよ」と言う方も。
もう一度この記事で確認することをおススメします。
記事の内容
1.子供のスプーンの持ち方
スプーン上手持ちが大重要です
「上手持ち」とは、上からスプーンをわしづかみにする持ち方です。
小さな子どもにスプーンを持たせると、自然とこの形になることが多いでしょう。
初めは、この持ち方のままでかまいません
上手持ちは、子供には持ちやすく、食べやすい(動かしやすい)持ち方であり、
その後の「スプーン鉛筆もち」「箸」「鉛筆」のベースとなる大変重要な持ち方です。
下手持ちは必要ない
スプーンの持ち方について。
育児書の中にはこのように、
①上手もち
↓
②下手持ち
↓
③鉛筆持ち
と順番に持たせる練習をするように、と書かれている物があります。
『②下手持ちでの練習は必要ない』というのが僕の考えです。
上手持ちに慣れることこそが、
その後の鉛筆持ちや箸への移行のポイントだと考えます。
下手持ちが不要な理由
下手持ちの場合、手の平を上にする、腕の回転の動作が必要であり。
この腕の回転は、乳児期にはまだ難しい動きです。
動きの発達段階からみて、腕の回転の必要のない上手持ちから始め。
次は回転の必要な下手持ちですよ、という考え方だと思われます。
しかし、この腕の回転の動作は。
食事以外でも生活や遊びの中でそだつものであり、そのための特別な練習は必要ありません。
また、やってみると分かるのですが、下手持ちはとても食べにくい持ち方になります。
2.上手持ちの3段階
遊びや生活の中で、
指を一本ずつばらばらに分化して使えるようになってくると。
上手持ちが3段階に変化していきます。
指を分化して動かせることは、鉛筆もちや箸の使用に必要なことです。
成長の中で、この指の動きの変化を見ることが大切であり。
指の動きの発達に合わせて、持ち方を変えてあげることが重要です。
見るポイントは親指と人差し指
< 第1段階 >
<第1段階>
手のひら全体で力を入れてぎゅっと握ります。
全ての指はくっついています。
この段階では、箸や鉛筆持ちはできません。
※ちなみに、この段階でも、「補正箸」は使えると思いますが、僕は勧めません。
< 第2段階 >
< 第2段階 >
手指の発達とともに、親指と人差し指が離れてきます。
各指の動きが一本ずつ動かせるようになってきた(分化)、ということです。
次のステップ移行のために、見るべきポイントは、
親指と人差し指です。
< 第3段階 >
< 第3段階 >
親指と人差し指がさらに離れ、他の指も離れてきます。
手の平ではなく、指先で軽く握れるようになってきます。
各指それぞれを動かすことが十分可能になってきた、ということで。
「鉛筆もち移行」の目安となる重要な時期です。
3.スプーン鉛筆もちへ
バキューンの手で
上手持ちで第3段階まで持てるようになったら。
「五本の指を別々に動かせるように成長した」ということです。
この段階で、鉛筆持ちに誘かけてみましょう。
(年齢ではなく、持ち方を見て次に誘います)
親指と人差し指を拳銃の形に。
「バキューンの持ち方」などという方もいます。
そこにスプーンを乗せてあげるといいでしょう。
初めは正確に持てなくてもかまいません。
繰り返すことで、持てるようになります。
練習は食事以外の時間で
ですので、できれば食事以外の場での練習が理想です。
おやつの時間の活用
手づかみで食べられる物も。
遊び感覚で少しだけスプーンを使ってみてはいかがでしょうか。
ままごと遊びの中で
ままごと遊びの中で試すのもいいですね。
楽しい、遊び感覚が大切です。
食べ始めの一回だけ
一度に何回もやり直しをさせるのではなく。
食べ初めに『一回だけ』意識させて上手に持たせます。
『初めの一回だけ』がポイントです。
それを毎食繰り返します。
スプーン鉛筆もちは、次の箸や鉛筆につながる重要な持ち方です。
あせらず、無理せずに進めてみてください。
4.補正箸は必要か
使わなくても、箸使用に影響ありません。
補正箸とは
「補正箸」とは箸に指を入れるための3つのリングがあり、
上部は箸が離れないように固定されている物です。
特に幼稚園児に使う子が多く、周囲の子が使っているので用意される方がいるようです。
(僕の地域では、認可保育所で補正橋を使用している所は見たことがありません)
トングのような動かし方で使う子もいる
上部が固定された補正橋は、構造上、トングと似ていて。
使い方によっては、「手の平グーパーの動き」だけで使えます。
「先端には滑り止め加工」がされている物が多く、
色々な物を簡単につかめてしまいます。
一方、箸の動きは、「全ての指は別方向に力をかけ」、
「下の箸は動かさない」ことが必要です。
箸とトングは、手や指の動かし方が全く違うということです。
補正箸は正しく使うことが大切
もし、補正箸を使うのであれば、「下の箸は動かさない 」
正しい使用方法が重要です。
補正箸については、以下のツイートや、そのコメントもご覧ください。
箸の上二本が固定され、指を入れる三つの輪が付いてる補助箸。補助箸は使えるが。普通箸は使えないという子
これは、箸の上と指が固定される事で。トングのように、手の平全体を開閉する動きで使う事に慣れた為
普通の箸を使うには。下の箸は動かさず。それぞれの指は、別方向に力をかける必要がある
— ひだ ゆう🚲心理相談員(発達) (@Zteacher2017) November 27, 2020
5.指の動きの分化に必要なこと
五本の指がそれぞれ別に動かせることが、箸や鉛筆には必要です。
しかし、それは、その為に指の動きを練習させることではありません。
楽しい遊びや生活の中で、様々な動きを経験し、
結果として動かせるようになるのです。
そして、
まずは身体の大きな動きを充分動かせることが必要です。
身体の発達は、「身体の大きな動き」→「手先の動き(小さな動き)」です。
6.まとめ:スプーンの持ち方と練習方法
最終的に箸使用を考えるならば、
まずは、『スプーンを鉛筆もちで持てるようになること』が重要であり。
その持ち方は箸や鉛筆につながると僕は思っています。
その為には、訓練ではなく、楽しい遊びや生活の中で。
身体全体の大きな動き、手先を使った小さな動きを充分に経験させること。
そして、周囲の大人が子どもの成長を見極め。
適切なタイミングで、適切な食具(スプーン、箸)で教えてあげることが大切です。
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