子どもの望ましい睡眠のためには。
子どもの周囲の睡眠環境を整えることは大切です。
本記事では、現役の発達相談員の僕が。
睡眠環境の中でも特に大切と思われるものを選び、解説します。
【僕の簡単なプロフィール】
保育者として20年。その後、地域の発達相談員と幼稚園・保育園巡回の経験が15年ほどあり。
大学院では保育や教育の心理学(学校心理学)を専攻していました。
所持資格:公認心理師(国家資格)、幼稚園教諭、小学校教諭など
記事の内容
1.子どもの睡眠環境のポイント
睡眠環境で僕が特に大切と考えるのは以下です。
・寝室の温度
・スクリーンタイム(動画の視聴)
・就寝前のリラックスタイム
・家族からの影響
それぞれ解説します。
寝室の温度
身体内部の体温が下がると眠くなる
人は身体内部の体温が下がると眠くなります。
スムーズに寝つくためには、そのような環境が重要です。
寝室や寝床の中の温度や湿度は、体温調節の仕組みを通して、寝つきや睡眠の深さに影響します。
環境温が低過ぎると手足の血管が収縮して、皮膚から熱を逃がさず体温を保とうとします。
また、温度や湿度があまり高いと発汗による体温調節がうまくいかずに、皮膚から熱が逃げていきません。
どちらも、結果的に、身体内部の温度が効率的に下がっていかないために、寝つきが悪くなります。
温度や湿度は、季節に応じて、眠りを邪魔しないと範囲に保つことが基本で、心地よいと感じられる程度に調整しましょう。
幼児の睡眠中の体温は、大人よりも高く、体温調節機能も未熟なため、室内温度の影響をより受けやすくなっています。
子どもの「適切な温度」を維持することで。
幼児は快適に眠ることができ、健康な睡眠を得ることができます。
適切な温度とは
必ずしも温度計をつけて管理する必要はありませんが。
大人が「ちょっと涼しいかな」と感じるくらいがいいです。
具体的には冬は20度前後。夏は外気温より4~5度低いくらいを目安に。
厚生労働省が提唱する睡眠指針12箇条によると、
寝室で寝具や寝間着を使用した状況であれば、室温は、夏は高めで冬は低めとなるものの
概ね13~29℃の範囲に収まるようにし、寝具の内部は33℃前後になるよう調整することが推奨されています。
また、湿度については、40~60%程度が良いとされています。
寝具や空調機器を上手に活用しながら、就寝環境を整えましょう。
▶詳しくはこちらをご覧ください。
寝る前のスクリーンタイム(動画を見る時間)を制限する
スクリーンから放出されるブルーライトは、脳内の睡眠に関係するホルモン(メラトニン)分泌を抑制し。
体内時計を狂わせ、熟睡できない可能性があります。
特に、幼児の脳は成長段階にあるため、影響を受けやすく、睡眠リズムが乱れることがあります。
また、スクリーンの使用は、刺激的で興奮状態を引き起こすため。
幼児を寝かしつけることが難しくなることがあります。
パソコン・スマートフォン・テレビなどの液晶画面には。
LED(発光ダイオード)がバックライトとして使用されていることが多く。
ブルーライトが強く放射されています。
▶詳しくはこちらをご覧ください。
就寝前のリラックスタイム
幼児の場合、睡眠前にリラックスすることが重要です。
例えば、絵本を読んだり、歌を歌ったり、マッサージをしたりすることで。
幼児が落ち着いてリラックスできる環境を作り出すことができます。
家族からの影響
乳幼児が早寝できないとき。
家族の影響を強く受けている場合があることがわかっています。
親が朝型だと、子どもも朝型になりやすく寝つきが良い一方で。
親が夜型だと子どもは夜型になり、寝つきが悪く、自分で起きられないことが多いことから。
親や家族の生活リズムやしつけが子どもの睡眠・覚醒リズムに大きな影響があると考えられています
もしも、家族が夜型の生活をされているとすれば。
子どもも夜型の生活になる可能性は高まります。
子どもだけの生活リズムや睡眠を改善させようと思うのではなく。
家族の生活習慣・食行動・生活リズムを見直してみるよい機会かもしれません。
2.寝かしつけのコツ
寝かしつけのコツは以下です。
・寝る時間を一定にする
・就寝前のルーティンを作る
・安心感を与える
・刺激的なものは置かない
・個人差がある
それぞれ解説します。
寝る時間を一定にする
寝かしつけの時間帯を決めます。
毎晩同じ時間に寝かしつけることで睡眠のリズムができます。
寝かしつけの時間帯は、夜8時から9時の間が理想ですが。
これは、あくまで理想です。
家庭の事情や子どもの状況に合わせて調整してください。
就寝前のルーティンを作る
就寝前に同じ行動をすることで、幼児は寝る時間が近づいていることを感じることができます。
例えば、絵本を読んだりするなどです。
ただし、就寝前に激しい運動や興奮するような行動は避けるようにしましょう。
安心感を与える
寝かしつけには、幼児にとって安心感を与えることが大切です。
お気に入りのぬいぐるみや毛布、親の声など、幼児が好きなものを近くに置くことで、安心して眠ることができます。
刺激的なものは置かない
寝室にはテレビやスマートフォンなどの刺激的なものを置かないようにし。
寝室を寝る場所として認識させるように心がけましょう。
個人差がある
幼児には個人差があるため、寝かしつけには時間がかかることもあります。
焦らず、根気強く対応することが大切です。
また、幼児が夜泣きをする場合は。
原因を探り、できるだけ早めに対処するようにしましょう。
3.幼児の睡眠時間
幼児の睡眠時間は、年齢によって変わってきます。
以下に、幼児の睡眠時間の目安を示します。
幼児が十分な睡眠をとることで。
成長ホルモンが分泌され、身体や脳の発達に必要な修復や再生が行われます。
また、睡眠不足は免疫力の低下やストレスの増大などにつながるため。
幼児の健康に影響を与えることがあります。
幼児の睡眠時間を適切に管理し、健康な成長をサポートしましょう。
4.まとめ:子どもの睡眠環境のポイント
幼児期の睡眠で悩む人は多く、短期間で改善することは簡単ではありません。
親の仕事など、家庭の生活状況や子どもの個人差によるところも大きいからです。
いま健康であれば、必ずしも理想の睡眠に近づける必要はないと思いますが。
それぞれの家庭状況に合った可能な範囲で。
望ましい睡眠環境を整えることは子どもにとっても大人にとっても大切なことです。
▶こちらもご覧ください。
【参考文献】
・西野 精治:スタンフォード式最高の睡眠 サンマーク出版,2018.
・西野 精治:スタンフォードの眠れる教室 幻冬舎,2022.
・マシュー・ウォーカー:睡眠こそ最強の解決策である SB Creative.2018.
・ニック・リトルヘイズ:世界最高のスリープコーチが教える究極の睡眠術 ダイヤモンド社,2018.
・ポリー・ムーア:賢い子は一歳までの眠りで決まる 日本文芸社,2017.
・森田 麻里子:医者が教える赤ちゃん快眠メソッド ダイヤモンド社,2020.
・ @koro_asakatsu: 睡眠で人生を好転させたい人へ~医師が教える8つの教え~ 有料noto,2021.